歯周病とは、歯を支えている歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨・セメント質)に炎症が起こる病気の総称です。炎症が歯肉だけにある状態を「歯肉炎」といい、炎症が歯肉から歯槽骨や歯根膜にまで広がった状態を「歯周炎」といいます。歯周病の特徴は、気づかないうちに進行していくことです。痛みや腫れが少ないために放置してしまうことが多く、気 がついた時には歯を支える歯槽骨が吸収され、歯がグラグラしたり、ものが噛めなくなり、最後には歯周組織が歯を支えきれなくなり、歯が抜け落ちたりします。歯周病は、多くの成人がかかっている病気ですが、小中学生などの若年層にまでも広がりを見せてきています。また最近では、歯周病が生活習慣病などの全身の病気と関連していることもわかってきています。つまり歯周病は口の中だけの病気ではなく、全身の健康と強くかかわりのある病気なのです。
歯周病は大きく分けて「歯肉炎」と「歯周炎」があります。
歯肉炎とは、歯周病の中でも初期の段階で、歯ぐきに炎症が起きている状態です。
歯ぐきが腫れたり、歯磨きのときに血が出たりという症状が見られ、この段階では痛みがほとんどないため、症状に気がつかなかったり、「たいしたことはないだろう」と放置したりする人も多いようです。
しかし、放っておけば症状はどんどん進んでしまうので、初期段階でしっかりケアすることが大切です。
歯肉炎は、歯周病の中でも症状は軽度。しっかりケアすれば症状は治まってきます。
[ 健康な歯 ]
歯肉の色は薄いピンク色で、歯と歯肉の境目の歯肉溝は1~2mm 程度です。この歯肉溝から歯周病が始まります。
[ 歯肉炎の歯 ]
歯肉溝に歯垢がたまった状態が続くと、歯肉に炎症が起き、腫れて歯肉ポケットになります。歯槽骨は、まだ吸収されていません。
歯肉炎がさらに進行した状態です。歯肉の腫れや出血だけでなく、歯と歯肉の境目の部分が壊れて隙間が深くなり、歯周ポケット(真性ポケット)を形成します。プラークがさらにこの隙間に沿って侵入すると、根の先の方へとさらに破壊が進行してゆきます。そうすると歯を支えている歯根膜線維や歯槽骨が壊されて、歯がぐらぐらと揺れるようになってきます。症状としては、歯の揺れの他に、歯肉の腫れ、出血、ポケットからの排膿、口臭などが見られるようになります。一般的に慢性歯周炎の病名で、その進み具合から軽度・中等度・重度に分けられます。歯肉の炎症が急激に生じると、急性症状として高度な腫れや強い痛みを伴うことがあります。
[ 軽度歯周炎 ]
歯肉の炎症がひどくなり、歯周病菌が歯周組織に侵入、歯槽骨や歯根膜も破壊され始めました。歯周ポケットが形成され歯根に向かって深くなり、歯垢や歯石がたまってきます。
[ 中等度歯周炎 ]
炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分近くまで破壊が進んでいます。歯がぐらつき始め、歯周ポケットもさらに深くなります。
[ 重度歯周炎 ]
炎症はさらに根の先に向かって拡大、歯槽骨が半分以上破壊され、歯がグラグラです。
歯周病の早期から現れる症状の一つに、歯と歯肉との間に隙間ができる歯周ポケットという状態があります。歯周ポケットは、深くなるほど歯周病の程度が進んでいると考えられ、歯肉の入り口から隙間の底の部分までの距離を測定して、重症度の判定をします。
[歯周ポケットの目安]
1 ~ 3mm : 正常
4 ~ 5mm : 初期歯周病
6mm 以上 : 重度歯周病
検査時に出血がある部分 :今現在炎症のおきている部分
歯をピンセットでつまんで動かし、どれくらい動揺するかを調べる検査です。歯周病が進行しているほど、歯の動揺は大きくなります。
歯周病が進行すると 歯を支えている骨が溶けて吸収されてしまいます。レントゲン撮影で顎の骨の状態を調べ、骨の吸収度合い(骨密度)を調べます。骨の吸収度合いが進んでいるほど、歯周病が進行しています。
比較的軽度な症状の歯周病に対して行います。
「スケーラー」という器具を使って普段の歯磨きでは取り除けない、歯に付着したプラークや歯石を除去します。
●歯周ポケット掻爬(そうは)術
軽度~中等度の歯周炎に対して行う外科的処置で、歯肉に局所麻酔を行って歯周ポケット内のプラークや歯石、膿、感染した組織を除去します。
●フラップ手術
中等度以上の進行した歯周炎に対して行う外科的処置で、歯肉に局所麻酔をした後に歯ぐきを切開して顎の骨からはがし、露出した歯根に付着しているプラークや歯石を除去します。又、感染した組織も取り除いていきます。